けることが、さし当たっての問題であった。
小一時間ばかり歩くと、やがて一つの村が見えてきた。
びんぼう村らしくって、あまりみいりの多いことは望《のぞ》めないが、村が小さければ巡査《じゅんさ》に出会うことも少なかろうと考えた。
わたしはさっそく一座《いちざ》の服装《ふくそう》を整《ととの》えて、できるだけりっぱな行列を作りながら、村へはいって行った。運悪くわたしたちはあのふえがなかったし、そのうえヴィタリス親方のりっぱなどうどうとした風采《ふうさい》がなかった。軍楽隊《ぐんがくたい》の隊長《たいちょう》のようなりっぱな様子でかれはいつも人目をひいていた。わたしには背《せい》の高いという利益《りえき》もないし、あのりっぱなしらが頭も持たなかった。それどころかわたしはちっぽけで、やせっぽちで、そのうえひどくやつれた心配そうな顔をしていたにちがいなかった。
行列の先に立って歩きながら、わたしは右左をきょろきょろ見回して、わたしたちがどういう効果《こうか》を村の人たちにあたえているか、見ようとした。ごくわずか――と情《なさ》けないけれど言わなければならなかった。だれ一人あとからついて来る
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