事を見つけて、金をもらって歩けばいいのだ」
「でも親方が刑務所《けいむしょ》から出て来たときに、どうしてわたしを探《さが》すでしょう。きっとこちらへ訪《たず》ねて来るにちがいありません」
「だからおまえもその日にここへ帰って来ればいいのだ」
「それでもし手紙が届《とど》いたら」
「手紙は取っておいてやるよ」
「でもわたしが返事を出さなかったら……」
「まあいつまでもうるさいな。急いで出て行ってくれ。五分間の猶予《ゆうよ》をやる。五分たってわたしが帰って来ても、まだここにいれば承知《しょうち》しないから」
 わたしはこの男と言い合うのはむだだということを知っていた。わたしは出て行かなければならなかった。
 わたしは犬とジョリクールを連《つ》れにうまやへ行った。それから肩《かた》にハープをしょって、宿《やど》を出た。
 わたしは大急ぎで町を出なければならなかった。なぜというに、犬に口輪《くちわ》がはめてないのだから、巡査《じゅんさ》にとがめられてもなんと答えようもなかった。わたしには金がないといおうか、それはまったくであった。わたしはかくしにたった十一スーしか持たなかった。それだけでは口輪
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