早く裁判所《さいばんしょ》に行って、いの一番に傍聴席《ぼうちょうせき》にはいった。巡査《じゅんさ》とのけんかを目撃《もくげき》した人たちの多くがやはり来ていた。わたしは裁判所に出るのがなんだかこわかったので、大きなストーブのかげにはいってかべにくっついて、できるだけ小さくからだをちぢめていた。
どろぼうをして拘引《こういん》された男や、けんかをしてつかまった男が初《はじ》めに裁判《さいばん》を受けた。弁護人《べんごにん》は無罪《むざい》を言《い》い張《は》っていたけれど、それはみんな有罪《ゆうざい》を宣告《せんこく》された。
いちばんおしまいに親方が引き出された。かれは二人の憲兵《けんぺい》の間にはさまってこしかけにかけていた。
はじめにかれがなにを言ったか、人びとがかれになにをたずねたか、わたしはひじょうに興奮《こうふん》しきっていたのでよくわからなかった。
わたしはただじっと親方を見ていた。
かれはしらが頭を後ろに反《そ》らせて、まっすぐに立っていた。かれははじて苦んでいるように見えた。裁判官《さいばんかん》は尋問《じんもん》を始めた。
「おまえは、おまえを拘引《こういん
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