。「さてさてこれは皮肉なお考えですな。なぜと申せば、音に名高き大先生たるカピ君《ぎみ》が、鼻の先に口輪をかけておりましては、どうして不幸《ふこう》なるジョリクール氏《し》が服すべき下剤《げざい》の調合を命ずることができましょう。物もあろうに口輪《くちわ》などとは、氏が医師《いし》たる職業《しょくぎょう》がふさわしからぬ道具であります」
この演説《えんぜつ》が見物をいっせいに笑《わら》わした。子どもたちの黄色い声に親たちのにごった声も交じった。親方はかっさいを受けると、いよいよ図に乗って弁《べん》じ続《つづ》けた。
「さてまたかの美しき看護婦《かんごふ》ドルス嬢《じょう》にいたしましても、ここに権力《けんりょく》の残酷《ざんこく》なる命令《めいれい》を実行いたしましたあかつきには、いかにしてあの巧妙《こうみょう》なる弁舌《べんぜつ》をもって、病人に勧《すす》めてよくその苦痛《くつう》を和《やわら》ぐる下剤《げざい》を服用させることができましょうや。賢明《けんめい》なる観客諸君《かんきゃくしょくん》のご判断《はんだん》をあおぎたてまつります」
見物人の拍手《はくしゅ》かっさいと笑《わら
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