ますることを禁止《きんし》せられようと言うのでございましょうか」
 巡査《じゅんさ》の答えは、議論《ぎろん》の必要《ひつよう》はない、ただだまってわたしたちは服従《ふくじゅう》すればいいというのであった。
「なるほど」と親方は答えた。「わたくしはただあなたがいかなる権力《けんりょく》によって、このご命令《めいれい》をお発しになったか、それさえ承知《しょうち》いたしますれば、さっそくおおせつけに服従《ふくじゅう》いたしますことを、つつしんで誓言《せいごん》いたしまする」
 この日は巡査《じゅんさ》も背中《せなか》を向けて行ってしまった。親方はぼうしを手に持ってこしを曲げたまま、にやにやしながら、旗《はた》を巻《ま》いて退《しりぞ》く敵《てき》に向かって敬礼《けいれい》した。
 けれどその翌日《よくじつ》も、巡査はまたやって来た。そうしてわたしたちの芝居小屋《しばいごや》の囲《かこ》いのなわをとびこえて、興行《こうぎょう》なかばにかけこんで来た。
「この犬どもに口輪《くちわ》をはめんか」と、かれはあらあらしく親方に向かって言った。
「犬に口輪をはめろとおっしゃるのでございますか」
「それは
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