わたしはそれよりも、左手にあった小山に登って、村の火が見えるかどうか見たいと思った。
わたしはカピを呼《よ》んだが、カピもやはりくたびれていたので、呼んでも聞こえないふりをしていた。これはいつでも言うことを聞きたくないときにカピのやることであった。
「おまえ、こわいのか」とヴィタリスは言った。
この質問《しつもん》がすぐにわたしを奮発《ふんぱつ》さして、一人で行く気を起こさせた。
夜はすっかり垂《た》れまくを下ろした。月もなかった。空の上には星の光がうすもやの中にちらちらしていた。歩いて行くと、そこらのさまざまな物がぼんやりした光の中できみょうな幽霊《ゆうれい》じみた形をしているように見えた。野生のえにしだ[#「えにしだ」に傍点]が、頭の上にぬっと高く延《の》びて、まるでわたしのほうへ向かって来るように見えた。上へ登れば登るほどいばらや草むらはいよいよ深くなって、わたしの頭をこして、上でもつれ合っていた。ときどきわたしはその中をくぐってぬけて行かなければならなかった。
けれどわたしはぜひも頂上《ちょうじょう》まで登らなければならないと決心した。でもやっとのこと登ってみれば、ど
前へ
次へ
全320ページ中118ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング