いで、早《はや》くここへもほうっておくれよ。」
 と言《い》いますと、猿《さる》は、「よし、よし。」と言《い》いながら、わざと青《あお》い柿《かき》をもいでほうり出《だ》しました。かにはあわてて拾《ひろ》って食《た》べてみますと、それはしぶくって口がまがりそうでした。かにが、
「これこれ、こんなしぶいのはだめだよ。もっとあまいのをおくれよ。」
 と言《い》いますと、猿《さる》は「よし、よし。」と言《い》いながら、もっと青《あお》いのをもいで、ほうりました。かにが、
「こんどもやっぱりしぶくってだめだ。ほんとうにあまいのをおくれよ。」
 と言《い》いますと、猿《さる》はうるさそうに、
「よし、そんならこれをやる。」
 と言《い》いながら、いちばん青《あお》い硬《かた》いのをもいで、あおむいて待《ま》っているかにの頭《あたま》をめがけて力《ちから》いっぱい投《な》げつけますと、かには、「あっ。」と言《い》ったなり、ひどく甲羅《こうら》をうたれて、目をまわして、死《し》んでしまいました。猿《さる》は、「ざまをみろ。」と言《い》いながら、こんどこそあまい柿《かき》を一人《ひとり》じめにして、お
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