、それでも毎日《まいにち》、くやしそうに下からながめていました。
するとある日|猿《さる》が来《き》て、鈴《すず》なりになっている柿《かき》を見上《みあ》げてよだれをたらしました。そしてこんなにりっぱな実《み》がなるなら、おむすびと取《と》りかえっこをするのではなかったと思《おも》いました。それを見《み》てかには、
「猿《さる》さん、ながめていないで、登《のぼ》って取《と》ってくれないか。お礼《れい》には柿《かき》を少《すこ》し上《あ》げるよ。」
と言《い》いました。猿《さる》は、
「しめた。」
と言《い》わないばかりの顔《かお》をして、
「よしよし、取《と》って上《あ》げるから待《ま》っておいで。」
と言《い》いながら、するする木の上に登《のぼ》っていきました。そして枝《えだ》と枝《えだ》との間《あいだ》にゆっくり腰《こし》をかけて、まず一つ、うまそうな赤《あか》い柿《かき》をもいで、わざと、「どうもおいしい柿《かき》だ。」と言《い》い言《い》い、むしゃむしゃ食《た》べはじめました。かにはうらやましそうに下でながめていましたが、
「おい、おい、自分《じぶん》ばかり食《た》べな
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