にはその芽《め》に向《む》かって毎日《まいにち》、
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「早《はや》く木になれ、柿《かき》の芽《め》よ。
ならぬと、はさみでちょん切《ぎ》るぞ。」
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と言《い》いました。すると柿《かき》の芽《め》はずんずんのびて、大きな木になって、枝《えだ》が出て、葉《は》が茂《しげ》って、やがて花《はな》が咲《さ》きました。
かにはこんどはその木に向《む》かって毎日《まいにち》、
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「早《はや》く実《み》がなれ、柿《かき》の木よ。
ならぬと、はさみでちょん切《ぎ》るぞ。」
[#ここで字下げ終わり]
と言《い》いました。すると間《ま》もなく柿《かき》の木にはたくさん実《み》がなって、ずんずん赤《あか》くなりました。それを下からかには見上《みあ》げて、
「うまそうだなあ。早《はや》く一つ食《た》べてみたい。」
といって、手《て》をのばしましたが、背《せい》がひくくってとどきません。こんどは木の上に登《のぼ》ろうとしましたが、横《よこ》ばいですからいくら登《のぼ》っても登《のぼ》っても落《お》ちてしまいます。とうとうかにもあきらめて
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