《さる》が親《おや》がにを殺《ころ》したから、かたきを討《う》ちたいと言《い》いますと、栗《くり》は、
「にくい猿《さる》だ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣《な》きでない。」
と言《い》いました。
それでも子がには泣《な》いていますと、こんどは蜂《はち》がぶんとうなって来《き》て、
「かにさん、かにさん、なぜ泣《な》くの。」
と聞《き》きました。
子がには猿《さる》が親《おや》がにを殺《ころ》したから、かたきを討《う》ちたいと言《い》いました。すると蜂《はち》も、
「にくい猿《さる》だ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣《な》きでない。」
と言《い》いました。
それでも子がにがまだ泣《な》いていますと、こんどは昆布《こんぶ》がのろのろすべって来《き》て、
「かにさん、かにさん、なぜ泣《な》くの。」
と聞《き》きました。
子がには猿《さる》が親《おや》がにを殺《ころ》したから、かたきを討《う》ちたいと言《い》いました。すると昆布《こんぶ》も、
「にくい猿《さる》だ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣《な》きでない。」
と言《い》いました。
それでも子がにがまだ泣《な》いていますと、こんどは臼《うす》がころころころがって来《き》て、
「かにさん、かにさん、なぜ泣《な》くの。」
と聞《き》きました。
子がには猿《さる》が親《おや》がにを殺《ころ》したから、かたきを討《う》ちたいと言《い》いました。すると臼《うす》も、
「にくい猿《さる》だ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣《な》きでない。」
と言《い》いました。
子がにはこれですっかり泣《な》きやみました。栗《くり》と蜂《はち》と昆布《こんぶ》と臼《うす》とは、みんなよって、かたき討《う》ちの相談《そうだん》をはじめました。
三
相談《そうだん》がやっとまとまると、臼《うす》と昆布《こんぶ》と蜂《はち》と栗《くり》は、子がにを連《つ》れて猿《さる》のうちへ出かけて行きました。猿《さる》はたんと柿《かき》を食《た》べて、おなかがくちくなって、おなかこなしに山へでも遊《あそ》びに行ったとみえて、うちにはいませんでした。
「ちょうどいい。この間《あいだ》にみんなでうちの中にかくれて待《ま》っていよう。」
と臼《うす》が言《
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