き》きつけて、殿《との》さまが縁側《えんがわ》へ出ていらしって、
「一寸法師《いっすんぼうし》、どうした。どうした。」
 とお聞《き》きになりました。
 すると一寸法師《いっすんぼうし》は、さも悲《かな》しそうな声《こえ》をして、
「お姫《ひめ》さまがわたくしをぶって、殿《との》さまから頂《いただ》いたお菓子《かし》をみんな取《と》って食《た》べておしまいになりました。」
 といいました。
 殿《との》さまはびっくりして、お姫《ひめ》さまのお部屋《へや》へ行ってごらんになりますと、お姫《ひめ》さまは口《くち》のはたにいっぱいお菓子《かし》の粉《こな》をつけて、眠《ねむ》っておいでになりました。
 殿《との》さまは大《たい》そうおおこりになって、おかあさんを呼《よ》んで、
「何《なん》だって、姫《ひめ》にあんな行儀《ぎょうぎ》の悪《わる》いまねをさせるのだ。」
 ときびしくおしかりになりました。するとこのおかあさんは、少《すこ》しいじの悪《わる》い人だったものですから、お姫《ひめ》さまのために自分《じぶん》がしかられたのを大《たい》そうくやしがりました。そしてくやしまぎれに、ありもしない
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