ると、たくさんりっぱなお屋敷《やしき》が立《た》ち並《なら》んだ中に、いちばん目にたってりっぱな門構《もんがま》えのお屋敷《やしき》がありました。一寸法師《いっすんぼうし》は、
「なんでも出世《しゅっせ》をするには、まずだれかえらい人の家来《けらい》になって、それからだんだんにし上《あ》げなければならない。これこそいちばんえらい人のお屋敷《やしき》に違《ちが》いない。」
と思《おも》って、のこのこ門《もん》の中に入《はい》っていきました。広《ひろ》い砂利道《じゃりみち》をさんざん歩《ある》いて、大きな玄関《げんかん》の前《まえ》に立《た》ちました。なるほどここは三条《さんじょう》の宰相殿《さいしょうどの》といって、羽《は》ぶりのいい大臣《だいじん》のお屋敷《やしき》でした。
そのとき一寸法師《いっすんぼうし》は、ありったけの大きな声《こえ》で、
「ごめん下《くだ》さい。」
とどなりました。でも聞《き》こえないとみえて、だれも出てくるものがないので、こんどはいっそう大きな声《こえ》を出《だ》して、
「ごめん下《くだ》さい。」
とどなりました。
三|度《ど》めに一寸法師《いっすん
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