吹《ふ》いたり、雨《あめ》が降《ふ》って水《みず》かさが増《ま》したりすると、舟《ふね》はたびたびひっくり返《かえ》りそうになりました。そういう時《とき》には、しかたがないので、石垣《いしがき》の間《あいだ》や、橋《はし》ぐいの陰《かげ》に舟《ふね》を止《と》めて休《やす》みました。
 こんな風《ふう》にして、一月《ひとつき》もかかって、やっとのことで、京都《きょうと》に近《ちか》い鳥羽《とば》という所《ところ》に着《つ》きました。鳥羽《とば》で舟《ふね》から岸《きし》に上《あ》がると、もうすぐそこは京都《きょうと》の町《まち》でした。五条《ごじょう》、四条《しじょう》、三条《さんじょう》と、にぎやかな町《まち》がつづいて、ひっきりなしに馬《うま》や車《くるま》が通《とお》って、おびただしい人が出ていました。
「なるほど京都《きょうと》は日本一《にっぽんいち》の都《みやこ》だけあって、にぎやかなものだなあ。」
 と、一寸法師《いっすんぼうし》は往来《おうらい》の人の下駄《げた》の歯《は》をよけて歩《ある》きながら、しきりに感心《かんしん》していました。
 三条《さんじょう》まで来《く》
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