ました。それから風《かぜ》のまにまに吹《ふ》き流《なが》されて、とうとう三日三晩《みっかみばん》波《なみ》の上で暮《く》らして、四日《よっか》めに一つの島《しま》に着《つ》きました。
 その島《しま》には今《いま》まで話《はなし》に聞《き》いたこともないようなふしぎな花《はな》や木がたくさんあって、いったい人が住《す》んでいるのかいないのか、いっこうに人らしいものの姿《すがた》は見《み》えませんでした。
 一寸法師《いっすんぼうし》はお姫《ひめ》さまを連《つ》れて島《しま》に上《あ》がって、きょろきょろしながら歩《ある》いて行きますと、いつどこから出てきたともなく、二|匹《ひき》の鬼《おに》がそこへひょっこり飛《と》び出《だ》してきました。そしていきなりお姫《ひめ》さまにとびかかって、ただ一口《ひとくち》に食《た》べようとしました。お姫《ひめ》さまはびっくりして、気《き》が遠《とお》くなってしまいました。それを見《み》ると、一寸法師《いっすんぼうし》は、例《れい》のぬい針《ばり》の刀《かたな》をきらりと引《ひ》き抜《ぬ》いて、ぴょこんと鬼《おに》の前《まえ》へ飛《と》んで出ました。そし
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