てありったけの大きな声《こえ》を振《ふ》り立《た》てて、
「これこれ、このお方《かた》をだれだと思《おも》う。三条《さんじょう》の宰相殿《さいしょうどの》の姫君《ひめぎみ》だぞ。うっかり失礼《しつれい》なまねをすると、この一寸法師《いっすんぼうし》が承知《しょうち》しないぞ。」
とどなりました。二|匹《ひき》の鬼《おに》はこの声《こえ》に驚《おどろ》いて、よく見《み》ますと、足《あし》もとに豆《まめ》っ粒《つぶ》のような小男《こおとこ》が、いばり返《かえ》って、つッ立《た》っていました。鬼《おに》はからからと笑《わら》いました。
「何《なん》だ。こんな豆《まめ》っ粒《つぶ》か。めんどうくさい、のんでしまえ。」
というが早《はや》いか、一|匹《ぴき》の鬼《おに》は、一寸法師《いっすんぼうし》をつまみ上《あ》げて、ぱっくり一口《ひとくち》にのんでしまいました。一寸法師《いっすんぼうし》は刀《かたな》を持《も》ったまま、するすると鬼《おに》のおなかの中へすべり込《こ》んでいきました。入《はい》るとおなかの中をやたらにかけずり回《まわ》りながら、ちくりちくりと刀《かたな》でついて回《まわ》
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