ういえばこんな寂《さび》しい原中《はらなか》におばあさんが一人《ひとり》住《す》んでいるというのもおかしいし、さっき出がけに、妙《みょう》なことをいって度々《たびたび》念《ねん》を押《お》して行ったが、もしやこの家《うち》が鬼《おに》のすみかなのではないかしらん。いったい「見《み》るな。」といった次《つぎ》の間《ま》には何《なに》があるのか知《し》らん。こう思《おも》うと、こわさはこわいし、気《き》にはなるし、だんだんじっとして辛抱《しんぼう》していられなくなりました。それでもあれほど固《かた》く「見《み》るな。」といわれたものを見《み》ては、なおさらどんな災難《さいなん》があるかもしれません。
坊《ぼう》さんはしばらく見《み》ようか、見《み》まいか、立《た》ったり座《すわ》ったり迷《まよ》っていましたが、おばあさんはやっぱり帰《かえ》って来《こ》ないので、とうとう思《おも》いきって、そっと立《た》って行って、次《つぎ》の間《ま》のふすまをあけました。
すると坊《ぼう》さんは驚《おどろ》いたの、驚《おどろ》かないのではありません。あけるといっしょに中からぷんと血《ち》なまぐさいにお
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