いちうなずいて聞《き》きながら、せっせと糸車《いとぐるま》を回《まわ》していました。そのうちだんだん夜《よ》が更《ふ》けるに従《したが》って、たださえあばら家《や》のことですから、外《そと》の冷《つめ》たい風《かぜ》が遠慮《えんりょ》なく方々《ほうぼう》から入《はい》り込《こ》んで、しんしんと夜寒《よさむ》が身《み》にしみます。けれどあいにくなことには、炉《ろ》の方《ほう》の火《ひ》がだんだん心細《こころぼそ》くなって、ありったけのまきはとうに燃《も》やしつくしてしまいました。
おばあさんはふと坊《ぼう》さんの寒《さむ》そうにふるえているのを見《み》つけて、
「おやおや、まきがみんなになりましたか。お客《きゃく》さまがあると知《し》ったらもっとたくさん取《と》っておけばよかったものを、気《き》のつかないことをしました。どれどれ、ちょっと裏《うら》の山へ行ってまきを取《と》って来《き》ますから、お坊《ぼう》さま、しばらく退屈《たいくつ》でもお留守番《るすばん》をお頼《たの》み申《もう》します。」
こういっておばあさんは気軽《きがる》に出て行こうとしました。
すると坊《ぼう》さんはた
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