の心配《しんぱい》はいりませんから、どうぞお泊《と》めなすって下《くだ》さい。」
 と頼《たの》みました。
 おばあさんはにこにこ笑《わら》いながら、
「まあまあ、そういうわけなら、御不自由《ごふじゆう》でも今夜《こんや》は家《うち》に上《あ》がってゆっくり休《やす》んでおいでなさい。」
 といって、坊《ぼう》さんを上へ上《あ》げてくれました。
 坊《ぼう》さんは度々《たびたび》お礼《れい》をいいながら、わらじをぬいで上へ上《あ》がりました。おばあさんは、囲炉裏《いろり》にまきをくべて、暖《あたた》かくしてくれたり、おかゆを炊《た》いてお夕飯《ゆうはん》を食《た》べさせてくれたり、いろいろ親切《しんせつ》にもてなしてくれました。それで坊《ぼう》さんも、見《み》かけによらないこれはいい家《うち》に泊《とま》り合わせたと、すっかり安心《あんしん》して、くり返《かえ》しくり返《かえ》しおばあさんにお礼《れい》をいっていました。
 お夕飯《ゆうはん》がすむと、坊《ぼう》さんは炉端《ろばた》に座《すわ》って、たき火《び》にあたりながら、いろいろ旅《たび》の話《はなし》をしますと、おばあさんはいち
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