「ああ、どうかして、そんなはなばなしい運《うん》がめぐってこないかなあ。」と、もみの木は、とんきょうな声をあげました「それこそ白い帆《ほ》をかけて、とおい海をこえていくよりも、ずっとよさそうだ。ああ、いきたいな。いきたいな。はやく、クリスマスがくればいいなあ。わたしはもう、去年、つれていかれた木とおなじくらい、せいが高くなったし、すっかり大きくそだってしまった。――ああ、どうかして、はやく荷車《にぐるま》の上に、つまれるようになればいいなあ、そして、目のさめるように、りっぱになって、あたたかいへやに、すみたいものだなあ。だが、それからは、それからはどうなるだろう。――たぶん、それからは、もっといいことがおこるだろう。もっとおもしろいことに、ぶつかるだろう。もしそうでなければ、そんなにきれいに、わたしたちをかざっておくはずがないもの。きっとなにか、たいしたことがおこるんだろう。すばらしいことが、やってくるんだろう。だがそれはなんだろうなあ。――なんだかわからないが、ただいきたい。ああ、たまらないぞ。もう、じぶんでじぶんがわからないんだ。」
 そのときまた、風とお日さまの光とが、やさし
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