ら、それなりきられて、車につまれて、馬にひかれて、森をでていきました。
「どこへいくんだろう。あの木たちは、みんな、わたしより小さいし、なかにはずっと小さいのもある。それからまた、なんだって、枝をきりおとされないんだろう。いったい、どこへつれていかれるんだろう。」
 もみの木は、こういってきくと、そばですずめたちが、さえずっていいました。
「しっているよ、しっているよ、町へいったとき、ぼくたちは、まどからのぞいたから、しっているよ。みんなは、そりゃあすばらしいほど、りっぱになるんだよ。まどからのぞくとね、あたたかいおへやのまんなかに、小さなもみの木は、みんな立っていたよ。金《きん》いろのりんごだの、蜜《みつ》のお菓子《かし》だの、おもちゃだの、それから、なん百とも知れないろうそくだので、それはそれは、きれいにかざられていたっけ。」
「で、それから――。」と、もみの木は、のこらずの枝をふるわせながらたずねました。「ねえ[#「「ねえ」は底本では「ね「え」]、それから、どうしたの。」
「うん、それからどうしたか、ぼくたちはしらないよ。とにかく、あんなきれいなものは、ほかでは見たことがないね。
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