っかくのかざりを、ひとつもなくすまいと、しんぱいしました。それに、あんまり明《あか》るすぎるので、ただもうぼうっとなりました。――
 やがて、両びらきのとびらがさあっとあいて、こどもたちが、まるで、クリスマスの木ごとたたきおとしそうないきおいで、とびこんできました。おとなたちも、そのあとからしずかについてきました。こどもたちは、ほんのちょっとのあいだ、だまって立っていましたが、――たちまち、わあっというさわぎになって、木のまわりをおどりまわりながら、クリスマスのおくりものを、ひとつ、ひとつ、さらっていきました。
「この子たちはなにをするんだろう。なにがはじまるんだろう。」と、もみの木はかんがえました。するうち、枝のところまで、ろうそくは、だんだんともえていきました。そしてひとつずつ消されてしまいました。やがて、木の枝につけてあるものを取ってもいいというおゆるしが出ました。やれやれたいへん、こどもたちは、いきなり木をめがけて、とびつきました。木はみしみしと音《おと》を立てました。もみの木のてっぺんにつけてある金《きん》紙の星《ほし》が、うまくてんじょうにしばりつけてなかったら、きっと木は
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