なって、あかりがつけばいいなあ。それからどんなことがあるだろう。森からいろいろな木があいにくるかしら。それとも、すずめたちがまどガラスのところへ、とんでくるかしら。もしかしたら、このままここで根がはえて、冬も夏もこうやってかざられたまま、立っているのかもしれない。」
 そんなふうに、あれやこれやとかんがえるのも、もっともなことでした。けれども、もみの木はあんまりかんがえつめたので、からだのかわが、いたくなりました。ちょうど、にんげんが、ずつうでくるしむように、木にとっては、このかわのいたいのは、かなりこまるびょうきなのでした。
 さて、ろうそくのあかりがつきました。なんというかがやかしさなのでしょう。なんというりっぱさなのでしょう。もみの木は、うれしまぎれに、枝という枝をぶるぶるさせました。そのため、いっぽんのろうそくの火がゆれて、あおい葉にもえうつりました。おかげで、かなりこげました。
「あぶないわ。」と、お嬢《じょう》さんたちはさけんで、あわてて火をけしました。そこでもみの木は、もうからだをふるわすこともできませんでした。こうなると、それはまったくおそろしいほどでした。もみの木はせ
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