、あおむけにひっくりかえされたことでしょう。
こどもたちは、もぎ取《と》ったりっぱなおもちゃを、てんでんにもって、おどりまわりました。ですからたれひとり、もう木をふりかえって見るものはありませんでした。たったひとり、ばあやが、木につけてあった、いちじくやりんごを、こどもたちがとりのこしていやしないかとおもって、枝のなかに首《くび》をさしいれて、のぞきこんだだけでした。
「おはなししてね、おはなししてね。」
こどもたちはそうさけんで、ずんぐりしたひとりの小さい人を、木のところへひっぱっていきました。その人は、木の下に腰《こし》をおろしてこういいました。
「よしよし、こうしていれば、みなさんはみどりの森のなかにいるようなものだ。だから、この木もうれしがって、おはなしをきくだろう。だがおはなしはひとつだけだよ。*イウェデ・アウェデのおはなしをしようかね。それとも、だんだんからころげおちたくせに、うまく出世《しゅっせ》して、王女《おうじょ》さまをおよめさんにした、でっくりもっくりさんのおはなしをしようかね。」
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*イウエデ、アウエデ、キウエデ、カウエデ―というようにつ
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