蛯、。さっそく、わたくしからはじめますよ。わたくしは、じっさい出あったお話をいたしましょう、まあどなたもけいけんなさるようなことですね。そうすると、たれにもよういにそのばあいがそうぞうされて、おもしろかろうとおもうのでございます。さて、東海は、デンマルク領のぶな林で――」[#「」」は底本では欠落]
「いいだしがすてきだわ。この話、きっとみんなおもしろがるわ。」と、お皿たちがいっせいにさけびました。
「さよう、そこのある、おちついた家庭で、わたくしはわかい時代をおくったものでしたよ。そのうちは、道具などがよくみがかれておりましてね。ゆかはそうじがゆきとどいておりますし、カーテンも、二週間ごとに、かけかえるというふうでございました。」
「あなたは、どうもなかなか話じょうずだ。」と、毛ぼうきがいいました。「いかにも話し手が婦人だということがすぐわかるようで、きいていて、なんとなく上品で、きれいな感じがする。」
「そうだ。そんな感じがするよ。」と、バケツがいって、うれしまぎれに、すこしとび上がりました。それで、ゆかのうえに水がはねました。
 で、スープ入は話をつづけましたが、おしまいまで、なか
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