くる日、うさぎはおみその中に唐《とう》がらしをすり込《こ》んでこうやくをこしらえて、それを持《も》ってたぬきのところへお見舞《みま》いにやって来《き》ました。たぬきは背中中《せなかじゅう》大《おお》やけどをして、うんうんうなりながら、まっくらな穴《あな》の中にころがっていました。
「たぬきさん、たぬきさん。ほんとうにきのうはひどい目にあったねえ。」
「ああ、ほんとうにひどい目にあったよ。この大《おお》やけどはどうしたらなおるだろう。」
「うん、それでね、あんまり気《き》の毒《どく》だから、わたしがやけどにいちばん利《き》くこうやくをこしらえて持《も》って来《き》たのだよ。」
「そうかい。それはありがたいな。さっそくぬってもらおう。」
こういってたぬきが火ぶくれになって、赤肌《あかはだ》にただれている背中《せなか》を出《だ》しますと、うさぎはその上に唐《とう》がらしみそをところかまわずこてこてぬりつけました。すると背中《せなか》はまた火がついたようにあつくなって、
「いたい、いたい。」
と言《い》いながら、たぬきは穴《あな》の中をころげまわっていました。うさぎはその様子《ようす》を見
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