かち山だからさ。」
「ああ、そうか。」
と言《い》って、たぬきはまた歩《ある》き出《だ》しました。そのうちにうさぎのつけた火が、たぬきの背中《せなか》のしばにうつって、ぼうぼう燃《も》え出《だ》しました。たぬきはまたへんに思《おも》って、
「うさぎさん、うさぎさん、ぼうぼういうのは何《なん》だろう。」
「向《む》こうの山はぼうぼう山だからさ。」
「ああ、そうか。」
とたぬきが言《い》ううちに、もう火はずんずん背中《せなか》に燃《も》えひろがってしまいました。たぬきは、
「あつい、あつい、助《たす》けてくれ。」
とさけびながら、夢中《むちゅう》でかけ出《だ》しますと、山風《やまかぜ》がうしろからどっと吹《ふ》きつけて、よけい火が大きくなりました。たぬきはひいひい泣《な》き声《ごえ》を上《あ》げて、苦《くる》しがって、ころげまわって、やっとのことで燃《も》えるしばをふり落《お》として、穴《あな》の中にかけ込《こ》みました。うさぎはわざと大きな声《こえ》で、
「やあ、たいへん。火事《かじ》だ。火事《かじ》だ。」
と言《い》いながら帰《かえ》っていきました。
三
そのあ
前へ
次へ
全12ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング