負《せお》って、先《さき》に立《た》って歩《ある》き出《だ》しました。向《む》こうの山まで行くと、たぬきはふり返《かえ》って、
「うさぎさん、うさぎさん。かち栗《ぐり》をくれないか。」
「ああ、上《あ》げるよ、もう一つ向《む》こうの山まで行ったら。」
 しかたがないので、またたぬきはずんずん先《さき》に立《た》って歩《ある》いていきました。やがてもう一つ向《む》こうの山まで行くと、たぬきはふり返《かえ》って、
「うさぎさん、うさぎさん。かち栗《ぐり》をくれないか。」
「ああ、上《あ》げるけれど、ついでにもう一つ向《む》こうの山まで行っておくれ。こんどはきっと上《あ》げるから。」
 しかたがないので、たぬきはまた先《さき》に立《た》って、こんどは何《なん》でも早《はや》く向《む》こうの山まで行きつこうと思《おも》って、うしろもふり向《む》かずにせっせと歩《ある》いていきました。うさぎはそのひまに、ふところから火打《ひう》ち石《いし》を出《だ》して、「かちかち。」と火をきりました。たぬきはへんに思《おも》って、
「うさぎさん、うさぎさん、かちかちいうのは何《なん》だろう。」
「この山はかち
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