し》らないおじいさんは、
「晩《ばん》はたぬき汁《じる》が食《た》べられるな。」
 と思《おも》って、一人《ひとり》でにこにこしながら、急《いそ》いでうちへ帰《かえ》って来《き》ました。するとたぬきのおばあさんはさも待《ま》ちかねたというように、
「おや、おじいさん、おかいんなさい。さっきからたぬき汁《じる》をこしらえて待《ま》っていましたよ。」
 と言《い》いました。
「おやおや、そうか。それはありがたいな。」
 と言《い》いながら、すぐにお膳《ぜん》の前《まえ》に座《すわ》りました。そして、たぬきのおばあさんのお給仕《きゅうじ》で、
「これはおいしい、おいしい。」
 と言《い》って、舌《した》つづみをうって、ばばあ汁《じる》のおかわりをして、夢中《むちゅう》になって食《た》べていました。それを見《み》てたぬきのおばあさんは、思《おも》わず、「ふふん。」と笑《わら》うひょうしにたぬきの正体《しょうたい》を現《あらわ》しました。
[#ここから4字下げ]
「ばばあくったじじい、
流《なが》しの下の骨《ほね》を見《み》ろ。」
[#ここで字下げ終わり]
 とたぬきは言《い》いながら、大きなし
前へ 次へ
全12ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング