と、うさぎは木の舟《ふね》に乗《の》りました。たぬきは土《つち》の舟に乗《の》りました。べつべつに舟《ふね》をこいで沖《おき》へ出ますと、
「いいお天気《てんき》だねえ。」
「いいけしきだねえ。」
とてんでんに言《い》いながら、めずらしそうに海《うみ》をながめていましたが、うさぎは、
「ここらにはまだおさかなはいないよ。もっと沖《おき》の方《ほう》までこいで行こう。さあ、どっちが早《はや》いか競争《きょうそう》しよう。」
と言《い》いました。たぬきは、
「よし、よし、それはおもしろかろう。」
と言《い》いました。
そこで一、二、三とかけ声《ごえ》をして、こぎ出《だ》しました。うさぎはかんかん舟《ふな》ばたをたたいて、
「どうだ、木の舟《ふね》は軽《かる》くって速《はや》かろう。」
と言《い》いました。するとたぬきも負《ま》けない気《き》になって、舟《ふな》ばたをこんこんたたいて、
「なあに、土《つち》の舟《ふね》は重《おも》くって丈夫《じょうぶ》だ。」
と言《い》いました。
そのうちにだんだん水がしみて土《つち》の舟《ふね》は崩《くず》れ出《だ》しました。
「やあ、たいへ
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