っぽを出《だ》して、裏口《うらぐち》からついと逃《に》げていきました。
おじいさんはびっくりして、がっかり腰《こし》をぬかしてしまいました。そして流《なが》しの下のおばあさんの骨《ほね》をかかえて、おいおい泣《な》いていました。
すると、
「おじいさん、おじいさん、どうしたのです。」
と言《い》って、これも裏《うら》の山にいる白《しろ》うさぎが入《はい》って来《き》ました。
「ああ、うさぎさんか。よく来《き》ておくれだ。まあ聞《き》いておくれ。ひどい目にあったよ。」
とおじいさんは言《い》って、これこれこういうわけだとすっかり話《はなし》をしました。うさぎはたいそう気《き》の毒《どく》がって、
「まあ、それはとんだことでしたね。けれどかたきはわたしがきっととって上《あ》げますから、安心《あんしん》していらっしゃい。」
とたのもしそうに言《い》いました。おじいさんはうれし涙《なみだ》をこぼしながら、
「ああ、どうか頼《たの》みますよ。ほんとうにわたしはくやしくってたまらない。」
と言《い》いました。
「大丈夫《だいじょうぶ》。あしたはさっそくたぬきを誘《さそ》い出《だ》して、ひどい目に合《あ》わしてやります。しばらく待《ま》っていらっしゃい。」
とうさぎは言《い》って、帰《かえ》っていきました。
二
さてたぬきはおじいさんのうちを逃《に》げ出《だ》してから、何《なん》だかこわいものですから、どこへも出ずに穴《あな》にばかり引《ひ》っ込《こ》んでいました。
するとある日、うさぎはかまを腰《こし》にさして、わざとたぬきのかくれている穴《あな》のそばへ行《い》って、かまを出《だ》してしきりにしばを刈《か》っていました。そしてしばを刈《か》りながら、袋《ふくろ》へ入《い》れて持《も》って来《き》たかち栗《ぐり》を出《だ》して、ばりばり食《た》べました。するとたぬきはその音《おと》を聞《き》きつけて、穴《あな》の中からのそのそはい出《だ》してきました。
「うさぎさん、うさぎさん。何《なに》をうまそうに食《た》べているのだね。」
「栗《くり》の実《み》さ。」
「少《すこ》しわたしにくれないか。」
「上《あ》げるから、このしばを半分《はんぶん》向《む》こうの山までしょっていっておくれ。」
たぬきは栗《くり》がほしいものですから、しかたなしにしばを背
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