うより、
(もう、一さいつき合うな――)
といわれた叔父の言葉を思い出して、腰を上げた時だった。
あの瑠美子《るみこ》を中心とした三人は、行った時のように、朗らかに笑い興じながら、馳足《かけあし》で上《あが》って来た。水に濡れて、尚ぴったりと身についた海水着からは、ハッキリと体中の線が浮び出て、一寸《ちょっと》彼の眼を欹《そばだ》たせた。
『さむいわねエ――』
『そうね、まだ水がつめたいわ』
『あら、瑠美さん、脣《くちびる》の色が悪いわよ……』
『そう、なんだか、寒気《さむけ》がするの――』
『まあ、いけないわ、よく陽にあたってよ……』
『ええ――』
彼女は、寒むそうに肩をすぼめると、テントの裏側の、暑い砂の上に、身を投げるように、俯伏《うつぶせ》になったまま、のびのびと寝た。
ぽとりぽとりとウエーヴされた断髪の先から、海水がしたたって、熱く焼けた白砂に、黒いしみ[#「しみ」に傍点]を残して消えた。すんなりと伸びた白蝋《はくろう》のような水着一つの美少女が、砂地に貼つけられたように寝ていると、そのむき出しにされた、日の眼も見ぬ福よかな腿のふくらみが、まだ濡れも乾かずに、ひどく艶
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