やかに照りかがやいた。
鷺太郎は、偸見《ぬすみみ》るようにして、経木《きょうぎ》の帽子をまぶかに被《かぶ》りゆっくりと歩いて行った。
その少女は、熱砂《ねっさ》の上に、俯伏になっていたが、時折、両の手をぶるぶると顫《ふる》わせながら、砂をかき乱していた。その手つきは砂《すな》いたずら[#「いたずら」に傍点]にしては、甚《はなは》だ不器用なものであった。なぜなら、彼女は自分の顔に砂のとびかかるのも知らぬ気に美しい爪を逆立てて掻寄《かきよ》せていたのだ――。
――鷺太郎が、いや、その周りにいた沢山の人たちが、その意味を知ったならば、どんなに仰天したことだろう――。
鷺太郎の眼を奪った美少女は、矢張り誰もの注目の的になると見えて、そのあたりに学生らしい四五人の一団と、家族らしい子供二人を連れた一組と、そして見張りの青年団員が三人ばかり、渚に上げられた釣舟に腰をかけていたが、時々見ないような視線を投げ合うのを、鷺太郎はさっきから知っていた。
彼女の、いま寝ているところは、先程までその学生達の三段|跳《とび》競技場であったが、いまは彼女一人、のけもののように、ぺたんとその空地へ寝ている
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