い肢体に、心にくいまでにしっかり[#「しっかり」に傍点]と喰込み、高らかな両の胸の膨らみから、腰をまわって、すんなりと伸びた足の先にまで、滑らかに描かれた線は、巨匠の描く、それのように、鮮やかな均斉のとれた見事さであった。
そして、その白く抜けた額《ひたい》に、軽がると降りかかるウエーヴされた断髪は、まるで海草のように生々《なまなま》しく、うつくしく見えた。
彼女は何んの屈託気《くったくげ》もなく、朗らかに笑っていた。そしてその笑うたびに、色鮮やかに濡れた脣《くちびる》の間から、並びのよい皓歯《こうし》が、夏の陽に、明るく光るのであった。
『じゃ――、泳いでこない?』
『ええ、行きましょう――』
砂を払って立った三人の近代娘は、朗らかに肩を組んで、渚を馳けて行った。その断髪のあたまが、ぷかぷかと跳ねると、やがて、さっとしぶきを上げて、満々とした海に、若鮎のように、飛込んで行った。
※[#「口+息」、311−4]《ほ》っと、鷺太郎は無意味な吐息をもらして、見るともなくあたりへ眼をやると、
『あ――』
彼は、思わず、啣《くわ》えた儘《まま》のストローから口をはなした。
その三人
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