う自分の姿が、ひどく見窄《みすぼら》しく感じられて、肩をすぼめてその一|群《むれ》のパラソルの村を抜けると、後方に設けられた|海の店《シー・ストア》の一軒「サフラン」に這入《はい》った。
 彼はデッキチェアーに靠《もた》れて、沸々《ふつふつ》とたぎるソーダ水のストローを啣《くわ》えた儘《まま》、眼は華やかな海岸に奪われていた。
 ――こういう時に、青年の眼というものは、えてして一つの焦点に注がれるものなのである。
 御多聞《ごたぶん》にもれず、鷺太郎の眼も、いつしか一人の美少女に吸つけられていた。
 勿論《もちろん》、見も知らぬ少女ではあったが、この華やかな周囲の中にあっても、彼女は、すぐ気づく程きわだって美しかった。
 そのグループは深紅と、冴えた黄とのだんだら縞《じま》のテントをもった少女ばかりの三人であった。
 鷺太郎の眼を奪った、その三人組の少女は、二人|姉妹《きょうだい》とそれに姉のお友達で、瑠美子《るみこ》――というのが、その姉娘の名であった。
 彼は、その瑠美子にすっかり注目してしまったのである。まことに、なんと彼女を形容したらいいであろうか。その深紅の海水着が、白く柔か
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