抜かれるほど驚ろいたのは、その部屋に、かろうじて、紗《うすもの》をつけた、或は、それこそ一糸も纏《まと》わぬ全裸な若い少女が二十人ほども、突然の闖入者《ちんにゅうしゃ》に、恐怖の眼を上げながら彳《たたず》んでいるのであった。
 と軈《やが》て、その二十人にも見えたのは、矢張《やは》り四方の鏡のせいで、実は四五人であることがのみこめたけれど、この地下に設けられた美少女群の裸体国は、一体何を物語るのであろう。
 彼女等は皆磨かれたように美しい肌をし、顔を粧《よそお》っていた。だが、まるでこの世界には着物というものは知られていないかのように、何処を捜しても、それらしいものは見当らなかった。
 そして又、異様な寝息に気がついて、じーと眼を据えて見ると、驚ろくべきことには、あの白藤鷺太郎に山鹿との交際を厳禁し、財産管理までしてしまった叔父の田母沢源助《たもざわげんすけ》のいぎたない[#「いぎたない」に傍点]豚のような寝姿が、つい先きの寝台の上に、ころがっていたのだ。
 一瞬、鷺太郎には、すべてを飲みこむことが出来た。叔父源助は、なんと山鹿の経営する秘密団のパトロンであったのだ、とすれば山鹿に欺《
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