につかまえ込んだ。
胴の太さが親指ほどもあろうか、と思われるような蛾や、大小各種様々な蝶が、合計二十匹ほども集められた。
『どうするんだい』
と訝《いぶ》かし気《げ》に訊く春生に、
『山鹿への御土産《おみやげ》さ……』
と鷺太郎はにやにやしながら答えた。山鹿のふるえ上《あが》る様を想像して、心中快哉を叫んでいたのである。
やがて、畔柳博士は仕事を済ますと、三人連れだって、道をいそいだ。
心配していた山鹿は、幸い在宅しているらしく、呼鈴《よびりん》を押すと婆《ばあ》やが出て来た。兼《か》ねて打合せたように、鷺太郎を残すと二人は物かげにかくれた。
『白藤ですが――。山鹿さんいましたら遊びに来たといって下さい』
わざと、洋菓子の箱を見せつけるように、持ちかえていった。
『はあ、少々おまち下さいませ』
鷺太郎は振りむいて合図をした。と同時に又婆やが出て来た。
『どうぞ……』
それと一緒に、驚ろく婆やを尻目に、どやどやと三人続いて這入《はい》ってしまった。
『やあ――』
と出て来た山鹿も、一瞬、不快な顔をしたが、遉《さす》がに、去《さ》り気《げ》なく
『どうぞ――』
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