よ山鹿十介が犯人と決まった訳ですね、こっちが三人なら大丈夫でしょう。これから行ってみましょう――』
畔柳博士は、しばらく頸《くび》をかしげていたが、
『よかろう――』
そういうと、三人は意気軒昂《いきけんこう》と夜道をいそいだ。
――あの最初の、そもそも最初から怪しいと思っていた山鹿十介が、いよいよ犯人だ、と決定されたのだ。鷺太郎は、素人の感も馬鹿にはならぬ、と聊《いさ》さか得意で、先頭に立って歩いていた。
だが、山鹿の別荘は人の気配一つしなかった。電燈は全部消し去られ、いくら呼鈴《よびりん》を押しても、とうとう返事を得ることが出来なかった。
『畔柳さん、山鹿は逃げたんじゃないでしょうか』
鷺太郎は、折角《せっかく》犯人がわかりながら、それをとり遁《に》がしたのではないか、と思うと、歯を喰縛《くいしば》った。
『いや、そんな筈はない』
畔柳博士は、何か自信あり気に呟《つぶや》いた。
『明日、来よう――』
七
その翌日も、ゆうべの星空が予言したように、雲一つない快晴であった。
鷺太郎は朝早く飛起きると、看護婦たちを手伝わして、蝶だの蛾だのを、洋菓子の箱一杯
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