、やっぱり僕の睨《にら》んだ通りだよ。ゆうべの白服の男は山鹿だったんだ。――こういう訳さ、山鹿はあの草叢《くさむら》の中に浴衣や釣竿を隠して置いたんだ、そして計画通り兇行《きょうこう》を演じると、直《す》ぐさま――そら、斯《こ》ういう風に、白シャツと白パンツの上に浴衣を着て、あの草叢を磯べりづたいに君の後方に廻ったんだ。ね、こういう黒っぽいたて縞の浴衣なら、宛《まる》でカムフラージされたと同様だから少々の光線で識別がつかんよ、まして「白服だ」と思いこんでるんだからね。それに夜というもんは、上から下は見にくいもんだ、それに比較すれば下から上は、幾分《いくぶん》明るい空をバックにしているんで割合に見えるし――夜道で道に迷ったら跼《かが》んで見ろ、というのはこの辺を指した言葉だよ……、で山鹿が変装して帰ろうと上を仰ぐといつの間にか君がいるのに気がついた、で心配になったんで夜釣を装って君の様子を捜《さぐ》りに来たんだろうよ。ところが君は何も知らぬ様子なので安心したんだろうけど、でも君の出ように依《よ》っちゃ或《あるい》はあの女と同じことになったかも知れないぜ……』
『冗談いっちゃいけませんよ―
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