ハッキリは解《わか》らなかったけれど、うしろ姿で山鹿と女とだ、と思った。それがZ海岸で二人とも草叢に隠れて、次に僕が行った時は、山鹿らしい男の姿はなく、女だけが殺されていた、という訳さ』
『じゃ、山鹿は隠れていたんだろう』
『うん、警官もそういったよ。だが、草叢に殺されていた女すら、白服だったから見つけ出したんだから、矢ッ張り白服を着ていたもう一人の男が隠れていても、すぐ解る筈なんだがね。それに、見えなくなるばかりか、僕が知らせに行こうとする、向うの方から、のこのこやって来た男が、山鹿なんだ』
『変な話だな、白服を着ていたかい』
『いや、浴衣《ゆかた》がけに、釣竿をかついでいたよ、夜釣りに行くんだ、といってね』
『前の白服、というのは慥《たしか》に山鹿だったのかい』
『さあ、……山鹿の家《うち》から出て来たのは慥《たしか》なんだがね、なにしろ暗がりとうしろ姿なんでね』
『そろそろあやしくなって来たナ。然し、これはその山鹿らしい白服の男が消えてなくなったところに謎があるね。
白服の男を山鹿として、それが女を殺し、なんらかの方法で姿を消して、家にとって[#「とって」に傍点]帰し、着かえて
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