が、ささっているんだ』
『その学生は――』
『それは、その妹と一緒に、厳重に調べられたんだが、いくら叩いても埃《ほこり》一つでない、それに、そのグループが、そんな兇器は見たこともない、というんで、とうとうものにならなかったんだ』
『ふーん、……最初の学生が行った時は、既に死んでいて、而《しか》もその学生は嫌疑者にならぬ、というんだね』
『そうだ――』
『ふーん、……で、君はどう思うんだい』
『僕――にもわからないけど、ただその場所で妙な男を見たんだよ、あの山鹿十介だ』
『山鹿? ああそうか、いつか、君がひどい眼に会ったという――』
『そうだ、彼奴《あいつ》だよ』
『傍《そば》にいたんか』
『いや、二十|間《けん》ばかり離れていた……』
『じゃ、駄目じゃないか』
『うん、でも、なんだか彼奴なら遣《や》りそうな気がするんだ――僕があんまりいい感じを持っていないせいかも知れないがね――その山鹿が飛んで来て、お節介にも「どうしました」なんて彼女を抱き起したりしてね。どうも怪しい様な気が、「感じ」が、するんだよ』
『でも君、その山鹿が抱き起す前に、学生が脈がないといったんだろう』
『うん』
『心
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