カンテラを頼りに、帰路についた。
山鹿は、あの「気がついてみると、前方を慥《たしか》に白服の男とあの少女との二人が歩いていた――」といった鷺太郎の言葉が、なぜかひどく気にかかると見えて、
『ね白藤さん、いったいその二人は、どの辺から来ましたかね……』
とか、
『どんな様子でした、その男は――』
とか、執拗《しつこ》いまでに、訊くのであった。鷺太郎は、
『いや――、さあ、どの辺だったかな……、でも二人いたのは慥《たしか》ですよ』
と軽く、面倒臭げに答え乍《なが》ら、心の中では、
(やっぱり、山鹿の奴は怪しい……)
と、一緒に、
(見ろ、その中《うち》、その高慢な鼻を、叩き折ってやる――)
と歓声を挙げたい優越を感じていた。
――鷺太郎が相手にならないので、いつか山鹿も黙ってしまうと、二人は黙々として、細い絶入りそうなカンテラのゆれる灯影《ほかげ》を頼りに、夜路を歩きつづけていた。
と、突然、
『あっ!』
山鹿が、彼に似合《にあわ》ぬ魂消《たまげ》るような叫びをあげると、ガタンとカンテラを取り落した。
はっ、とした瞬間、真暗になった路の上を、カンテラが、がらんがらんと転
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