そ》めた鷺太郎の目に、白の半ズボンに白のシャツの男と、も一人、矢張《やは》り白地に大胆な赤線を配したズボンを穿《は》いた断髪の女とが、ひょっこり現れた。あたりは暗かったけれど、その二人の服装が白っぽかったので、鷺太郎にはその輪廓《りんかく》を読みとることが出来、一人はたしか山鹿だ、と断定はしたが、も一人の女性の方は、山鹿と交際していないので誰だったか解ろう筈《はず》もなかった。
二人は、この身を密めて窺《うかが》っている鷺太郎には気づかなかったらしく、肩を並べて歩きだした。そして、Y海岸への散歩であろうと思っていた彼の予想を裏切って、こんな時間に、もう人通りもないであろうと思われるZ海岸の方へ向って、ぶらぶらと歩いて行った。
鷺太郎は、一寸|躊躇《ためら》ったが、すぐ思いなおして、そのあとを気づかれないように追《つ》いて行った。別にこれ[#「これ」に傍点]という意味はなかったのだけれど、恰度《ちょうど》その方向が、帰り路《みち》になっていたせいもあり、又、彼の「閑《ひま》」がそうさせたのだ。
山鹿と、そのモダーンな女とは、一度も振りかえりもせず、時々ぶつかり合うほど肩を寄せ(彼と
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