つ》とした美少女の群れが、まる一年、陽の目も見なかった貴重な肢体を、今、惜気もなく露出《ろしゅつ》し、思い思いの大胆な色とデザインの海水着をまとうて、熱砂《ねっさ》の上に、踊り狂うのである。
――なんと自由な肢体であろう。
それは、若き日にとって、魅力多き賑《にぎ》わいである。
二
胸を病んだ白藤鷺太郎《しらふじさぎたろう》は、そのK――町の片隅にあるSサナトリウムの四十八号室に居た。
あの強烈な雰囲気に溢れたY海岸からは、ものの十五丁と離れぬ位、このサナトリウムだのに、恰度《ちょうど》其処が、崖の窪みになっていて、商店街からも離れていたせいか、一年中まるでこの世から忘れられたように静かだった。
然し、このサナトリウムにも、夏の風は颯爽と訪れて来る。白藤鷺太郎は、先刻《さっき》からの花火の音に誘われて、二階の娯楽室から、松の枝越しに望まれる海の背に見入っていた。
ポーン、と乾いた音がすると、ここからもその花火の煙りが眺められるのである。
(今日は、海岸開きだな……)
鷺太郎は早期から充分な療養をした為《ため》、もういつ退院してもいい位に恢復していた。だが、
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