わずハッとしたよ、……前から求めていた理想的な体だからな、それに行商の女だから何処へ行っちまったんか、解らないだろう、実際絶好だったよ……」
そんなことをいうと、もう写真をとる用意をはじめた。
「撮るのかい……だけどなぜ硝子の箱なんかに入れたんだ、写真を撮るだけなら、殺さなくてもよかったんだろう――」
洵吉にはまだ、総てが疑問だった。
「僕はこの体を見附けるためには、随分苦労したんだぜ、それが向うから飛込んで来たんだ、……殺した訳、それはね――」
水木は、一寸、言葉を切ったが、すぐ続けた。
「それはね……、ふ、ふ、この素晴らしい健康な肉体が、次第に腐って行く、その過程を撮ろうというんだ、驚いたかい。
このふっくりとした腹も、明日はぺこんと凹むに違いない、眼の玉の溶ろけて行くところや、股の肉のべろっと腐り落ちて行くところを撮ろうというんだ、毎日一枚位ずつね、何時までかかるかしら……」
この恐ろしい計画をきいた瞬間、流石に今まで常人の想像もしないような醜悪な写真を手伝っていた洵吉も、思わずグッと胃の中のものが、咽喉元にこみ上げて来て、軽い眩暈《めまい》を感じた。
この硝子箱の中
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