《はば》で、ドアーの奥に消えて行った。
と同時に、私は思わず外聞も忘れてホッと溜息をついた。が、この美しい彼女の歩き方には、何処となく少々ぎこち[#「ぎこち」に傍点]ないところがあったように見えたのだが、それは、後で思いあたったことである。
地底の研究室
「ふっふっふっ……」
鷲尾老人は、そう忍びやかに笑うと
「だいぶ、参ったようですナ」
そういわれて我に還った私は、いつになく耳朶《みみたぶ》がぽっと※[#「赤+報のつくり」、178−5]《あか》らんだのを意識しながら
「いや――。それはそうとさっきの式の中にですねKというのがあったようですが、それはどんなことを表わしているんですか」
「はッははは、早速この式を利用しようというんですか――、なるほど、なるほど、はッははは、Kというのはね。或る係数ですよ、これは、その時の状態によって加減しなければならん[#「しなければならん」は底本では「しなけれならん」]数を表しているんです――、が、まアあの木美子《きみこ》だけはお止《よ》しなさい、木美子の場合にとっては、この係数が零《ゼロ》なんですよ、だからこの式に零《ゼロ》をかけ
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