白金神経の少女
蘭郁二郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)黄昏《たそがれ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)椅子|卓子《テーブル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)※[#「赤+報のつくり」、178−5]《あか》らんだ
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     バー・オパール

 日が暮れて、まだ間もない時分だった。
 街の上には、いつものように黄昏《たそがれ》の遽《あわた》だしさが流れて、昼の銀座から、第二の銀座に変貌しつつあった。が、この地下の一室に設けられたバー・オパールの空気だけは、森閑《しんかん》として、このバーが設けられて以来の、変りない薄暗さの中に沈淪《ちんりん》していた。バー・オパールは昼も夜も、いつもこのように静かで暗かった。
 この騒然たる大都会のしかも都心に、このようにポツンと忘れられ、取りのこされているバーがあろうとは――私は、偶然にそのドアを押した瞬間から、そのなんとなく変った雰囲気に、搏《う》たれてしまったのである。
 このバーは酒場というよりも応接間、といった方が相応《ふさわ》しかった。四坪ばかりの小
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