白金神経の少女
蘭郁二郎
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)黄昏《たそがれ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)椅子|卓子《テーブル》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)※[#「赤+報のつくり」、178−5]《あか》らんだ
−−
バー・オパール
日が暮れて、まだ間もない時分だった。
街の上には、いつものように黄昏《たそがれ》の遽《あわた》だしさが流れて、昼の銀座から、第二の銀座に変貌しつつあった。が、この地下の一室に設けられたバー・オパールの空気だけは、森閑《しんかん》として、このバーが設けられて以来の、変りない薄暗さの中に沈淪《ちんりん》していた。バー・オパールは昼も夜も、いつもこのように静かで暗かった。
この騒然たる大都会のしかも都心に、このようにポツンと忘れられ、取りのこされているバーがあろうとは――私は、偶然にそのドアを押した瞬間から、そのなんとなく変った雰囲気に、搏《う》たれてしまったのである。
このバーは酒場というよりも応接間、といった方が相応《ふさわ》しかった。四坪ばかりの小
次へ
全26ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
蘭 郁二郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング