昔からいわれていますよ、そら、あの『忍ぶれど色に出にけり我が恋は……』という歌がある位で、感じのいい者にはすぐわかるこの一種の雰囲気をですね、どの程度に彼女が感ずるか、どうしたらもっともっと強く感じさせることが出来るか――という重大なる問題の答がこの式です、この式で(i. ds)というのは、iはあなたの恋流の強さ、ds というのがあなたの心臓ですよ。だからこの二つのものはあなたの心臓に流れる恋流を表しているんです。それから sinθは向きの角度に影響があることを示している、つまりそっぽ[#「そっぽ」に傍点]を向いとっちゃいかん――というわけ。下のrはあなたと彼女との距離を示しておる。恋愛はその二人の間の距離の、しかも自乗に逆比例していることを如実に示しておるわけですよ。だから四尺はなれている時より、二尺の距離になったら四倍、一尺になったら四尺の時に比べて、途端に九倍となって飛躍するわけですナ、――どうです、思いあたりませんか? 又こいつが離れるとなると、どんどん小さくなってしまいますからね、逢わずにいれば、やがて忘れてしまうのはこの辺の消息を物語っていますよ、だから、あなたが彼女の意を
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