、恋愛現象を電気現象と見て、電気の方から考えれば、数学的に一目瞭然たる結果が出て来るんですよ。――あなたはまだお若いし、これから大いに利用価値のある問題だ、よく聞いていて下さい」
鷲尾老人は、そういって、にたりと微笑みをもらし、内ポケットから手帳を出して、テーブルの上に拡げた。
恋愛電気学
「先ず結果からいいますよ、あなたはビオ・サヴァルの法則っていうのを知っていますか――」
「さあ――、一向に」
「そうですか、それはこういう式です」
と老人は鉛筆をとって、手帳に次のような式を書いた。
[#ここから5字下げ、ここから数式]
dH = K. ids・sinθ/r2[#「2」は上付き小文字][#「ids・sinθ/r2[#「2」は上付き小文字]」は分数]
[#ここで字下げ終わり、ここで数式終わり]
「――この式で dH というのは、求めるところの彼女の心臓に及ぼすあなたの電流――ではない、恋流の強さですよ。だいたい人間が恋をしますとネ、丁度電線に電流が通ると、その周りに磁界というものが出ると同じようになんかこう甘い――というか一種の雰囲気が出るもんらしいですナ、――これは
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