って継がせられようが、どういう非道い眼にあったもんか、滅茶滅茶に切れてしまっとるのじゃ、なんとかならんか――と思った時に、ふと考えついたのが、わし[#「わし」に傍点]の研究をしておる電気学で、電線で神経の代用が出来ぬものか、と思いあたったのじゃ、そして電気をよく通すもの、しかし銅では体内で酸化したり腐食する惧《おそ》れがあるというので、白金《プラチナ》を髪の毛のように細かく打伸ばしてな、これを使って見た、ところがどうじゃ大成功なのじゃ、神経系統にいささかの障《さわ》りもないばかりか、しかも流石は畔柳博士の執刀だけに、現在傷一つも皮膚に残っておらんからの――」
「へーえ……では、左きき[#「きき」に傍点]というのはどうしたわけなんですか、白金《プラチナ》線を入れても、それはそれで神経が自然に、又伸びてきて接《つな》がったのじゃないですか」
「ふふん、それは素人考えというもんじゃよ、瞭《あき》らかに現在も木美子の腕の運動神経は白金《プラチナ》線が代用しとる証拠があるんじゃ、というのは畔柳博士が忙しさのあまり白金《プラチナ》線を逆につけてしまったのじゃ、つまり普通の人間では脳の左半球から出る
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