ることは機械と同様、又同じ者でも空中状態によって相当なる差も出来るもんじゃがね」
「すると、ものを考えるというと脳に電流が起るんですか」
「そうじゃ、その電流が神経という導線を伝わって手や足に刺戟を与える、すると運動を起す、ということになるんじゃよ」
「しかし……」
「ウソだ、というのかね。よろしい、それならば君に、君の知っている実例を示して話そう――あの木美子を知っとるじゃろう」
「一寸、見たきりで」
「それでいい、木美子は元々左きき[#「きき」に傍点]ではなかった。それが、こんなことになったのはこういう事情があるんじゃ。木美子はわし[#「わし」に傍点]の娘ではない、震災で両親を失った孤児じゃ、しかもその時たった二つか三つだった木美子は、可哀そうに潰れた家の下敷になって柔かい両腕を折られてしまったのじゃよ」
「じゃ、あの、義手で……」
「違う! 黙っとれ!――しかし幸いなことに命だけは助かって、わし[#「わし」に傍点]が救い出し、丁度救護に当っていた外科の名手、畔柳《くろやなぎ》博士に診てもらったが、残念なことには両腕とも運動神経がすっかり切れてしまっとる。これも一寸や二寸なら引っ張
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